失っても構わない

 

「お久しぶりです、スメラギさん」
そう言って微笑んだ私に彼女は目を見開いた。頭の天辺から足元まで私をを眺めると、その美しい顔が歪む。
「どうしたの……ケイ」
その問いの意味は「どうしてソレスタルビーイングに参加したのか」という疑問だろう。私はスメラギさんの質問に答えた。
「ソレスタルビーイングに入ろうって、決めたんです」
「どうして……」
久しぶりに見た彼女は今にも崩れ落ちそうなほど弱々しい印象を与えた。四年前の戦いの中でふと見せたものよりも更に頼りない表情。
何がそんなに彼女を変えてしまったのか、それは過去の戦いかもしれないしもっと昔から彼女を戒める何かかもしれない。
「スメラギさん、大丈夫ですよ」
何処か他の場所へ行くことは不可能だった。彼らを知って、彼らと生きて、その思いを知ってしまったから。もう関わらずにいることは出来なかった。
「私は大丈夫です」
そんな心配そうな顔はされなくても良い。ましてや哀れみなど必要ない。
自分で選んだ道だ。もっと楽で安全な道もあったことは知っている。けれどそれを棄てたのは自分自身だ。
「私は、やりたいと思ったんです」
この道を選んだ以上、私はもう決めた。犠牲は既に覚悟した。



 

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