おやすみの前には

 

身体が睡眠を欲しているのは自分が一番よく分かっている。けれど何故か眠れなかった。
身体を休めた途端色々なことを考えてしまう。マリーのこと、ハレルヤのこと、これからのこと、新たなロックオン・ストラトスのこと。
そうなるととても眠れる気分ではない。思考はアレルヤを憂鬱にさせた。
(少し動くかな……)
このまま眠れないのに横になっているのも、身体は休まるが気分が更に悪くなる。
食堂にいって何か温かいものを飲むのも良いし新しいトレミーを見て回るのも良い。
そう考えて、アレルヤは自室を出た。




食堂でアレルヤを迎えたのはケイだった。彼女はアレルヤを見ると僅かに目を見開いてから柔らかく微笑んだ。
「どうしたのアレルヤ。寝れない?」
アレルヤはその問いに苦笑いを返した。
それを肯定と受け取った彼女は自分が飲んでいたマグカップにいったん視線を下ろすと再びアレルヤを見て口を開く。
「じゃあ何か飲む? ミルク? それとも紅茶とか?」
「どうしようかな……。じゃあミルクにするよ。あ、自分でいれるからいいよ」
立ち上がりかけたケイを止めようとするも「いいからアレルヤは座ってて」と返される。
彼女は冷蔵庫からミルクを取り出すと手近にあった鍋に注いでコンロを点けた。
そのまま座っているのも悪いと思ったアレルヤは、ケイの隣で一緒に白い膜の張った鍋を眺めることにする。
「ケイも眠れなかったのかい?」
「そう……かな。うん、そんなとこだなぁ」
はっきりとしない物言いが引っ掛かったが詳しく聞くつもりもなかった。
ありきたりに「身体は大事にね」と告げると「アレルヤこそ無理しないでね」と笑って返された。
「アレルヤが帰ってきて凄く嬉しいんだ。マイスターがとかじゃなくて、アレルヤが生きてて本当に良かった。……だから、無理はしないで」
「あ……」
「今はゆっくり休むのが一番大事だよ。それで落ち着いてきたら、またあったこととか聞かせてくれると嬉しいけど」
「そうか……」
ぽつぽつと泡の浮かんできた鍋をコンロからおろしてマグカップにミルクを流す。
一人分にしては多かったのはアレルヤと彼女の分だったからだ。
「はい、アレルヤの」
受け取ったマグカップの熱さが心地よい。
「ありがとう。……あ、ケイ」
「ん? なに?」
「此処で飲んでいてもいいな?」
「え。私はそのつもりだったんだけど……」
恥ずかしかったのか段々声が小さくなるケイがおかしくて、思わず笑い声が漏れた。
「なんかめっちゃ恥ずかしいんだけど……、うっわぁ私ばかみたいだ……」
「ありがとうね、ケイ」
真っ赤になった頬を(すごいなぁ)だなんて思って触れてみたらマグカップと同じくらい熱くて。
ケイは驚いて飛び上がった後に「何やってんだよ!」と叫んだ。



 

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