君の手を捕まえて

 

どうすればいいのか。
狭い通路の壁に跳ね返りつつ、うんざりと散乱しているタオルを見た。
この世界(というかこの時代)にやってきてしまってから一番困っているのはこの無重力だ。
レバーを掴んでの移動は覚えればすぐに出来たがレバーのないところでは思うように動けない。
今もばら蒔いてしまったタオルをなんとか取ろうとしているのだが、タオルに集中すれば身体を壁に打ち付けたりして散々だった。
「何をしている」
「あ、ティエリア」
白い布の間から誰かが近付いてくると思ったらティエリアだった。
「洗濯物が吹っ飛んだんだよ」
「ならさっさと拾え」
「簡単じゃないんだってば」
ティエリアが渡してくれた数枚を袋に詰めようとした途端、身体が前回りをしようと傾く。
(わ、やば)
このまま宙返りして壁に激突するかな、と思ったけれど、不思議なことに私の身体はふわりとバランスを取り戻した。
「ティエリア?」
「腰に重心を置くことを意識しろ」
「ん?」
そのとき漸く私の腕がティエリアに掴まれていることに気付く。
意外なことに驚いたのと無重力の不安定さで気付くのが遅くなった。
「あ。ありがとう、ティエリア」
「分かったのか」
「何が?」
「二回も言わせる気か」
「ううん、大丈夫大丈夫」
正直何を聞かれたか分からないけれど怒られるのも嫌だったのでとりあえず返事をしておく。
するとティエリアは何も言わずぱっと私の腕を離した。
「わっ」
「……何処が大丈夫なんだ」
後ろの壁に尻餅をついた私にティエリアは吐き捨てるように呟いた。



 

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