さようならと覚醒

 

薄暗い廊下に息を潜めて立て膝をする。
遠くから聞こえる機械音は、恐らくトレミーに纏わり付いたオートマトンだ。
(死ぬ。きっと、死ぬかも。でも、もう、いい)
ブリッジにミレイナとフェルトを残すのは戦力を考えても正しい判断だ。
だから自分が彼女を守る為に、こうして盾になることも、また正しい。
「謝らないわ」
「そりゃそうですよ」
スメラギはマシンガンを持って何処かへ行ってしまった。
彼女を最初にオートマトンと接触させるのは反論したが、客観的に考えてみれば彼女の判断は正しい。
たった4年間、基礎程度の白兵戦の訓練しかしていない自分が前に出ても犬死にするだけだ。しかも彼女達に何の益もない。
ならば自分に出来ることは限られている。今更何に対して文句を言えというのだろうか。
遠隔操作の可能な爆弾が武器だ。これならば狙撃やナイフに比べて技術が要らないし、時間稼ぎには良い。
最悪、自分を巻き込んでしまっても――
(構わない。それがみんなの未来に繋がるのなら)
戦況の厳しさは4年前のあの頃を思い出す。そして同時に、喪われた彼らの命を思い出す。
(ロックオン、クリス、リヒティ、モレノさん。無駄に、したくない)
「駄目だ、みんな。この先に何もないなんて」
自分は良い。どうせ余所者だ。
けれど他の人達は駄目だ、そう強く思った。
ミレイナにはイアンとリンダがいる。それを崩したくはない。ソレスタルビーイングで育ったという彼女だが恋に興味津々だ。いつかいい人と付き合うこともあるかもしれない。
フェルトには何が何でも生きて欲しい。それをきっと、ロックオンもクリスも望んでいる。あの子だって出会った頃より遙かに女の子らしくなってこれからどんどん可愛くなるに違いない。
スメラギ。あの人の過去を知ることはないが、ずっと自分達の命を背負って頑張ってきた人だ。このまま苦しんだまま死ぬなんて、そんなことはいけない。
(未来を、あの人達にあげたい)
何度も攻撃の手順を繰り返しながら、薄暗い廊下の中で必死にみんなの顔を思い浮かべていた。
 

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