失くした後の恋心

 

アレルヤが女の子を連れて帰ってきたとき、彼女がアレルヤのとても大切な人なんだとすぐに分かった。
彼女に向けられた視線や声から慈しみや優しさといったものが滲み出ていたから。
マリー。
それは以前アレルヤがぽつりと漏らした名前だった。
(良かったね、アレルヤ……)
これで私とアレルヤの距離が広がるのは確定だろう。
いい機会なのかもしれない。私の感傷にアレルヤを巻き込む訳にはいかない。彼には彼の幸せがあるのだから。
アレルヤから離れようと決めてから間もなくして、私は彼女と話す機会を得た。
「どうしても話したいことがある」とは彼女の言葉だったのか、それともアレルヤのものか。
アレルヤが付き添うという条件のもと、私は彼女と対面した。



「貴方とハレルヤの関係を、アレルヤに聞きました」
ハレルヤ、と。 長らく聞かない名前に胸がぎゅっと締め付けられた。
恥ずかしいような、悲しいような。
(アレルヤったら何言ってるんだ)とも思ったけれど彼も考えあってのことに違いない。
だからアレルヤを責めることもせず「そうですか」とだけ返事を返した。
アレルヤが心配そうな視線でひたすらマリーを見つめている中、彼女は金色の目で私をとらえて口を開いた。
「ハレルヤを殺したのは私です」
「…………」
「四年前、私の攻撃で、ハレルヤは死にました」
「……だから、どうしたんですか?」
返した私の声は自分で驚くほど淡々としていた。冷たいというよりは乾いている。
けれど、それ以外に返すこともなかった。
「えっと……。……私は、貴方を恨んでたり憎んだりしないと思います。今はまだ驚いているからかもしれないけど、でも、……今はとりあえず、貴方を恨む気持ちはありません」
「でも……」
「仕方なかったんです。戦いだったから。ハレルヤがたくさん人を殺さなきゃいけなかったように、貴方もハレルヤを殺さなきゃいけなかったんですよ」
ハレルヤがこの人に殺されたことより、むしろ、この人とハレルヤやアレルヤが殺し合わなければいけなかったことが悲しかった。
そしてそれが時代の宿命というのならばその原因を生んだのは私のような過去の人間達だ。
そんな私が彼女を責めることなんて出来る筈がない。
「マリーさん。アレルヤを幸せにして、マリーさんも幸せになって下さい」
私の分まで、と言うつもりはなかった。私は自分が不幸せだと思っていない。
「あ。あと、また良ければソーマさんともお話させて下さい」
そう言った私に彼女は心底驚いたような顔をして、肯定も否定もしなかった。
「アレルヤ」
ずっと口を閉じていたアレルヤに向かって呼び掛ける。
「マリーさんを泣かせたら駄目だよ」
これが今の私に出来る精一杯の祝福。
笑ってくれればそれでいいのに、アレルヤは苦しそうな顔をして声をしぼり出す。
「ケイ……。ごめん」
「私はいいんだよ。私はハレルヤを好きでいられて幸せなんだから。だから、アレルヤが幸せになれることを祈ってる」
(たとえハレルヤが何処にもいなくても)
私は私なりのハッピーエンドを迎えたつもりだ。だから今度は彼らの番。
私が幸せであるように、二人も幸せでありますように。



 

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