憎しみの道しるべ

 

軍用オートマトンによるカタロンの基地への侵攻。それはただの一方的な虐殺だった。
折り重なる屍は辺りに死の匂いを振り撒いている。
その中の一つに近付いたローザは、横たわる男の頬が涙に濡れていることに気付いた。
「死にたくなんか、なかったよね」
開いたままだった瞼をそっと閉じさせる。
体の奥から込み上げてくる熱を奥歯で噛み締めてなんとか涙を堪えた。
「ずるいよ、アロウズ。ふざけてる」
彼らは此処で何が起こったか知らないだろう。どれだけの、どんな人間が死んだかなんて知らないだろう。
(そんなの、この人達は死ななくてよかったじゃないか!)
堪えていたつもりだった涙がぼろぼろと零れる。それはとめどなく地面を濡らした。
悔しかった。ニンゲンの愚かさが。進歩した技術をこんなことにしか使えないニンゲンはなんて馬鹿なんだ、と。
(ニンゲンはいつの時代もばかなままだ。ううん、要らないところだけかしこくなってる)
未だ鳴咽が止まない喉がひりひりと熱い。
けれど喉よりも腫らした目尻よりも熱いのは、胸だ。
この胸が確かな思いをもってどくりと疼いた。
「殺してやる。死ねばいい。ひとに戦わせておいて自分は戦わないやつなんて、死んじゃえばいいんだ」
そう言って笑った少女の瞳にかつての無機物のような冷たさはなく、憎しみの炎がゆらゆらと燃えていた。
(味わえ。戦う苦しみを)



 

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