猫と鼠の追いかけっこ

 

今日のアレルヤは様子がおかしい。
「ケイって実はすごく小さいんだね」
(アレルヤが大きいだけだよ)
なんて、そんなこと言わなくても伝わればいいのに。
それよりも壁に押し付けられて身動き出来ないのが辛い。
「刹那も私と同じくらいだけどね」
「不思議だね」
「はい?」
噛み合わない会話。悪いのは私じゃない。アレルヤだ。
「ケイは何故か弱々しく見えるんだ。刹那はそんなことないのに」
「まぁ……身体鍛えてないし」
「違う。いや、違わないけど。それだけじゃなくて」
アレルヤの大きな手がぐるりと私の手首を掴んだ。
いきなりのことに驚いて腕を振るけどがっちりと掴まれてしまっている。
「こんなに細い……すぐに折れそうで怖いよ」
そう言ってアレルヤはその手に力を込める。
「痛くない? 大丈夫?」
「痛くないよ、別に、平気」
(このままだと血が止まりそうだけど)
アレルヤの気が済むならそれくらい構わない。
そもそも握り締められてどう骨折するの分からない。どちらかというと『砕ける』といった表現が正しいのかもしれない。
(あーあ)こんなことを考えているなんて、暢気なものだ。
「嘘、吐いてない? 僕は君を傷つけたくないよ」
段々強くなる力。既に皮膚の感覚はなく痛みが骨に直接響いてくる。
けれど「痛い」と、その一言が出なかった。
「うん。平気だよ」
アレルヤに傷つけられるならそれでもいいと思った。
そんな私もアレルヤのことを言えない。かなりの病気だ。



 

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