迷宮と化した世界

 

僕やソーマ・ピーリスのような存在が生まれないように。
アレルヤはそう言った。
だから戦うのだと。それが戦う理由だと。
けれど、と私は思う。
世界の歪みから生み出されたハレルヤはどうなるのだろう。
過去に“もしも”はないという。
けれど、もしもアレルヤがマイスターにならざるを得なかった人生以外をおくれたのだとしたら、ハレルヤは存在しなかっただろう。
数年前までの私のようにアレルヤも両親ときょうだいと温かい家庭の中で生きられたら、ハレルヤは必要なかっただろう。
そうしたらハレルヤと私が出会うことはなかった。


私と彼の出会いと、世界とを天秤に掛けようとするなんて馬鹿げた話だ。
そう、馬鹿げた話の筈なのに。天秤がどちらに傾くかなんて、分かりきっている筈なのに。
(おかしいな……)
選べないのだ、私は。
彼は、私が人生で初めて、今までの生活を棄てても良いと思うほど愛した人。
そんな彼を切り捨ててまで私はこの世界に何を求めるというのだろうか。
勿論ソレスタルビーイングのみんなは大好きだ。今はアロウズにいるという妹も愛している。
けれど、それら全てが歪んだ世界の結果だというのならば、それらとハレルヤは別の世界に存在するものではない。
だとすれば、私が選ぶものは決まっている、筈だ。


もしも、私とハレルヤが出会わない代わりに世界が平穏を保っていられるのだとしたら。
私は彼を諦めることが出来ただろうか。
どちらを選んだとしても私はひとでなしでしかなく、自分が選ぶことの出来る世界の小ささに私はこっそりと涙を流した。



 

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