楽な道なんてない

 

イアンをマリーに任せた沙慈はここ数日を共にした赤色のハロを抱えてオーライザーに急ぐ。
整備を手伝いガンダムの傍にいることを続けていたおかげで最初に感じていた威圧感もなくなっていた。
オーライザーの大体の構造も分かる。
勢いよく床を蹴ったそのとき、突然オーライザーのコクピットが開いた。
「サジ!」
姿は見えずとも特徴的な声ですぐに分かった。
「ローザちゃん?!」
コクピットの中を覗くとパイロットスーツを着たローザがいた。
凄まじい速さでコンソールを叩いている。
「かいひ行動、ドッキング行動の操作ををハロにじょうとするよ。
 ダブルオーの戦闘区域までいったら刹那に通信して、ドッキングできるから。
 かそくGには気をつけて」
次々とシステムが起動していく。
コクピットを囲む壁が明るく光ると、ローザはシートから腰をあげて沙慈を手招きした。
沙慈がシートに着くとハロがローザの手によってセットされる。
「じゃあハロ、刹那のとこまで行くんだよ」
「リョウカイ、リョウカイ」
「君は……」
「あたしはオーライザーには乗れない。アンジュで出るから。
 だから、きみにおねがいするしかないんだ」
操縦幹を握る沙慈の手を上から一回りも小さな手のひらが包む。
「――――」
彼女が小さく呟いたのが分かったが言葉は聞こえなかった。
「死んじゃいけないよ」
最後にそう言うと、ローザはフロアを蹴った。
自分の機体に向かう少女の背中が今の沙慈にはとても大きく見えた。


 

inserted by FC2 system