んじゃ、またね!

 

アレルヤはマリーとトレミーを降りる。世界を見て回りたいと言った彼を、クルーの誰もが引き留めることはしなかった。私もそうだ。マリーが傍にいるのならば、これ以上アレルヤに戦いの中に身を置かせることはしたくなかった。
寂しさが全くないか、と問われれば否定する。アレルヤとの別れは即ちその中の彼との
別れでもあるのだから。
けれど、駄々を捏ねるには私もハレルヤもアレルヤが好きすぎて、そんな相手だから私達は愛し合った。アレルヤが望むのならば、私達はそれに従うのだろう。
二人がトレミーを降りる前に私と彼に話す時間を与えてくれたのは、少なからず罪悪感もあったからだろうが、それ以上にアレルヤの優しさだと思っている。
「アレルヤは優しすぎて損をするとか、そういうタイプだ」
「昔から変わんねぇよ、アイツは」
「ハレルヤ、これからも助けてあげてね」
私はソレスタルビーイングに残る。他にも色々選択肢はあった。けれど、私は世界の矛盾の体現者として戦い続ける彼らを助けることを選んだ。
アレルヤについて行く選択肢もあったけれど、私はそれを望まない。世界を見ることよりも戦い続けることを選んだのも理由の一つだが、もう一つ大きな理由がある。
もしも私が二人についていくとしても、私はきっとハレルヤを求め続けてしまう。それはアレルヤに対して酷いことだと思うし、ハレルヤもそんなことを望んでいない。
こうして私とハレルヤは別れを選んだけれど、其処に悲壮感はない。近くにいないだけでそんな悲しむ必要はない、時代を超えて出会った自分達に今更距離なんて大した問題ではない、自分にそう言い聞かせれば心は優しく凪いでいた。
もしかしたら、そう言い聞かせなければ今此処で泣き出してしまうからかもしれない。
「浮気すんなよ」
「する訳ないだろ。そっちこそ、な」
「出来るかよ。アレルヤに怒られちまう」
「その前にマリーが怖そうだ」
笑い合う。まるで明日も会えるかのような気軽さで。涙でさよなら、なんてきっと私達には似合わないから。いつか会える、そのいつかを信じていられる。
(別れの挨拶はどうしようか)と考えて、こんなにもちゃんとしたお別れは初めてだったと数年前を思い返した。
あのときは本気で喪われたと思った。アレルヤの消息不明、彼の口から告げられたハレルヤの消滅、再会出来ないと知らされてからもこっそりと胸の奥で期待していた。目が覚めれば期待して、眠りに就く前には泣いた。別れが何の挨拶も無しに過ぎ去っていて、私は信じられずに求め続けていた。
それでも過去に過ごした優しい時間を温かさにして、そうして生きてこられた。
「死ぬんじゃねぇぞ」
「それも、お互いさまだよ」
別れの刻はやってくるけれど、この別れは永久のものではない。
生きていれば必ず何処かで会える。
だから今は笑顔でさよなら。
(きっと別れてから泣くと思うけど)

「んじゃ、またね!」

 

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