つがいとして二匹で行動するようになって、以前は知らなかった事が見えるようになってきた。


まず驚いたのは腕をとった時だった。
その細さに驚愕した。当の猫は「平均並だ」と言っていたが、元々他の猫と馴れ合う事のなかった自分には誰かと比べようもない。この手が剣を振るっているのかと思うと背筋を冷たいものが走った。
それから、頭がよく働く。これも意外だった。宿で見る限りは本能のままに行動していると思ったから。その分生意気な口も多いのが困りものだったが元の認識が次々と覆されていくのは面白い。
新しい一面を見るたびに何故か気持ちよくなった。
あとは、起きた直後にベッドで見るふにゃりとした笑顔。普段の快活さがまだ眠っている時に見せるそれは何処か煽情的だ。
そんな顔で『おはよう』と、呂律が回っていない口で紡ぐ。雌のような色気が強い訳ではないが、それでも安心は出来ない。あの猫は上手く雄に化けているつもりなのだろうが、時に見せる艶が雄を煽るのであれば意味がないのだ。危機感の無さに呆れと苛立ちが生まれるがそれを理由にして傍にいる自分がいるという事も否定出来ない。
もはや賛牙と闘牙だからという理由だけでは抑えられない独占欲と庇護欲。それらが何から来るのかは分からないが、ただ、この小さな賛牙が自分のものだと思うと心に温かいものが流れ込んでくる。
彼女の歌に込められたおもいはいつだって分かりやすい。戦いの為の歌にしては優しい、けれど戦う者に歌う歌。身体から溢れ出てくる力は、決して賛牙が闘牙におくるという歌の力だけではない。
この賛牙の為に剣を振るっている、そう思うだけで負ける気はしなかった。
――彼女の闘牙であることは、何があっても譲れない。




彼の銀色の髪は綺麗なだけではない。柔らかくて気持ち良い。これは最近知った事だ。戦闘中の空気を含んで羽のように舞う様も、二匹で戯れる時の綿毛のようなくすぐったさも、好きだった。
普段から突き放すような言動が多い彼はつがいになってからも同じだった。それでも自分は気付いてしまったのだ。その中に彼の思いがしっかりと込められている事に。言動の冷たさに隠された気遣いや慈しみを見つけてしまうと、どうすればいいか分からなくなる。
嬉しい。ありがとう。大好きだ。そんな思いを面と向かって言えない。だからいつももどかしくなるのだ。いつか伝えられたらいいな、と思う。歌では伝えているつもりだから、自分の言葉で頑張って伝えたい。私の闘牙でいてくれてありがとう、と。
彼が戦う姿を見ていると優越感と劣等感を同時に感じてしまう。優越感は彼のつがいでいられる事に対して、劣等感はそんなつがいとして相応しくない自分に対して。
賛牙としての自信はまだまだない。正直恐ろしく強い闘牙としての力を考えると未熟過ぎると思う。不安に感じる事も多い。賛牙として自分は相応しいのか?
だからこそなのだろう。自分の歌が彼に届くとき、嬉しさでいっぱいになるのは。問いを肯定されているみたいで。勿論歌っているときは、力のサポートをする為に、傷つかないように、そう考えて祈って願って。
けれどいざ歌が彼に届いたのを見てしまうとどうしても嬉しさに震えてしまうのだ。
バレてないといいな、と願うように思う。戦闘にはあまりにも不釣り合いなこの思いなんて知られたくない。からかわれたりするならまだしも、呆れられたりはしたくない。
未熟過ぎる賛牙だけれど、彼の為に歌いたい気持ちは決して負けない。
――彼の賛牙でいることは、何があっても譲りたくない。


(貴様は少しは自分の力の限度というものを考えろ)
(いやだ。そんな事言ってたら強くなれないだろ)
(…………)
(ごめん)
(謝られても行動に移さなければ同じだ)
(うん、……ありがとう)
(……あぁ)





だっみが
すきだか









 

2007/09/07

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