目の前に広がる惨状にニールは大きな溜息を吐いた。
「なにやってんだお前らは……」
唯一話が出来そうなハレルヤに現状と経緯の説明を求める。大体の想像は嫌でも
出来てしまうのが悲しいが。
「見て分かんねーのかよ」
「いや、想像はつくがな……」
「はっ。てめぇの弟が勧めたんだぜぇ?」
答えるハレルヤの顔も赤い。正直なところ、ハレルヤが飲酒をするのは想定の範囲内であったし、教師としては失格だが見過ごしてやるつもりでもあった。
けれど実際はどうだ。この場にいる全員が明らかに酒を飲んでいる。
顔をほんのりと染めたハレルヤの膝の上では啓までもが顔を真っ赤にさせて爆睡している。
少し離れたところでは仰向けに寝転がる華南の姿、その向こうには折り重なって倒れるアレルヤとライルの姿がある。
「酔ってからどうなったんだよ、この有様は」
「別に? アレルヤは誰彼構わず抱き付きやがるしこいつは寝るし」
啓を差した指はそのまま華南へ。
「アレルヤの奴、カナンを襲おうとしたら逆にぶん投げられてやんの」
そこまで言ってげらげらと笑うハレルヤ。その振動で啓がぼんやりとだが意識を取り戻した。
「……は、れ」
「おう。啓、大丈夫か?」
「ん。なんか……ぼーってする」
「寝たかったら寝てろよ」
「ありがと……」
ハレルヤは啓の瞼が再び落ちていくのを見つめながら優しく髪をすく。
そんな微笑ましい光景を前にしてもニールは和むことが出来なかった。今は他の三人をどうするかで頭がいっぱいだ。アレルヤとライルは寝かせておいて構わないだろう。問題は華南だ。
ニールの性格上、まさか女の子をフローリングに転がしておく訳にもいかない。
(とりあえずカナンの部屋に運んでおくか……)今のところそれくらいしか出来そうにない。
華南の傍で膝をついてそっと上半身だけを起こしてやる。
その振動で彼女の睫毛が震えた。苦しげな呻き声。
「大丈夫か? カナン。部屋に戻ってから寝ような」
「ニー……?」
「そうそう。抱っこするけど寝てていいからな」
膝裏と脇に手を伸ばし身体を持ち上げようとする。
しかしその前に華南が動いた。いきなり体当たりを喰らったニールはその場に尻餅をつく。
「あぶね……」
「ニール、の……ばか!」
「は……?」
どうして罵られなければいけないのか、全く話がついていけない。
そもそもどう見ても相手は酔っていてまともな思考をしているとは思えない。
ニールの混乱の余所に、華南は焦点の合わない眼できっとニールを睨みつけた。
「アンタがいない所為でっ、もうすぐお嫁に行けないからだになるとこだったじゃない!」
「はあぁっ?!」
「ニールのばかぁあ……」
そのままへばり付いて泣き出してしまった彼女を引き剥がすことも出来ない。
助けを求めハレルヤを見たが、いつのまにか彼も啓を抱きしめながら夢の中に旅立っていた。
(もう色々めちゃくちゃじゃねーか……)
せめて毛布か何かを持って来させてほしい。ニールがそう思いながらも睡魔に負けるのはそれから数十分後のこと。





やさしいのはキミのあい 





 

 

 

 

 

 

 

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