三日ぶりに見たアレルヤの顔はひどく疲れきっていた。
持ってきた林檎と果物ナイフを掲げ、はアレルヤの横たわる簡易ベッドに腰かける。
「いくら何でも半日食べないのはきついと思ったから」
慣れない手付きで赤い皮がゆっくりと剥かれていく。次第に晒されていく白い果実をアレルヤはじっと見ていた。
「ごめんね、慣れてないから剥くの遅いんだ」
その視線に気付いたは恥ずかしそうに苦笑いを浮かべる。アレルヤの手が恐る恐る彼女の服に伸びた。
……」
「どうした? アレルヤ」
「頭が、痛くて」
「飲み過ぎたかな」
勿論それだけではないことをお互いに知っていた。正式なクルーではないとはいえ、にも今回アレルヤが提案したミッションの内容は知らされているし、彼の過去は本人の口から聞いた。
けれどその内容は啓にとってあまりにも実感のないもので、ただ簡単に引っ掻き回せるものでもないことは分かっていたから、根掘り葉掘り聞こうとも思わなかった。
「そういえば聞いたことがあるんだけど」
そのときの脳裏を過ったのは元いた世界で聞いた話だった。
「人間は大昔は戦いなしで生きてこられたんだって」
縄文時代か、弥生時代か、大昔の話だ。歴史の教師が言っていたのを思い出す。
脈絡のない話。けれどアレルヤには話の意味を分かってもらえたようで、隈のできた目元が笑みに歪んだ。
「そうなんだ。すごいね」
アレルヤは夢物語を聞かされたような、普段より幼い表情をしている。
「信じられないけど、そうだったんだって」
「うん……信じられないよ」
閉じられた彼の瞳から、涙の粒が零れ落ちた。

遥か昔を思い出す。
人類は進化をするごとに楽園から離れていっている。 





始まりの果実





 

 

 

 

 

 

 

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