「お前ってさぁ」
トレミーに帰れない。
その事実にショックを受けている暇もなく目の前の彼の質問に答えなきゃいけない。
そうじゃなきゃ私がどんな目に遭うやら。
はっきり言って彼は何を考えているか分からない。
少しでも怒らせると問答無用で殺されそうな気がする。
だった従うほかない。
「ソレスタルビーイングじゃないんだろ?」
どうしてそのことを知っているのか。そんなこと聞ける筈もない。
けれどもう誤魔化せないことは分かった。
「そう、です。私はただ保護されただけです」
「何であの船にずっと乗ってんだよ」
「帰る場所がなかったんです。だから……成り行き、なのかな?」
「へぇ……、じゃあお前あそこで何やってたんだ?」
休む暇もなく与えられる質問。
言葉を必死に探しながら返答していく。
「雑用……ですかね。洗濯物分けたり飲み物運んだり……」
「…………」
反応が返ってこない。
何かまずいことを言ったのかと思ったけれどそんな覚えもない。
こっちも何ひとつ反応出来ないまま黙りこくっていると、暫くしてから相手が口を開いた。
「じゃあお前のここでそういうのやれよ」
「はい?」
「拒否権はねーよ」
「はぁ……」
まず理解出来たのは私に拒否権がないということ。
その次に自分に何が求められたかを理解出来た。
反抗する気はない。
私だってここから逃げられないことが認められないほど愚かではないつもりだ。
「じゃあ俺が色々教えてやんよ。……お前、名前なんだっけ?」
そういえばまだ言ってなかった、と今更ながらに思い出す。
そして同じく相手の名前も聞いていない。
です。貴方のことはなんて呼べばいいですか?」
「ミハエル・トリニティだ。好きなように呼びゃいい」
「はぁい」
それだけ言うとさっさとミハエルさんは部屋を出て行こうとする。
その後ろ姿をぼんやりと見ていると紅色の瞳が振り返ってぎろりと私を睨んだ。
「何でついてこねぇんだよ!」
「あっ、ごめんなさい!」
鋸の刃のように荒々しく凶暴な声だった。
慌てて彼に追いつきながら、トレミーの人達の顔を思い浮かべて絶望的な気持ちになった。

(ホームシック、再び)





白い薔薇を散らせて





 

 

 

 

 

 

 

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