「はいこれ、ひばりくんに」
そう言って、いつも屋上で遭遇する彼女に差し出されたのはビー玉と白い羽だった。
ビー玉はきらきらと太陽光を反射して輝いていたが所詮ビー玉だ。羽にいたっては屋上に落ちていたものに違いないと思うほどだ。
こんなものを貰わなければいけない理由は一つもない。
「何これ」
「ひばりきょうやのたんじょうびに」
「プレゼントのつもり?」
(だったらなんて経済的なんだろうね)
「あったりー」
冷たい此方の視線にも気付かずに手は伸ばされたまま。拒否権はないのだろうか。
「いらないよ、それ。君のことだから屋上に落ちてたんでしょ?」
「あったりー」
呆れ過ぎると溜息も出ないらしい。自身で実感した。殴る気も起きてくれない。
応接室に戻ったら捨てればいいか、なんて自分を納得させて差し出されたそれらを受け取る。
そうしなければ彼女は動かなさそうだったし、無視をするほど彼女をどうでもいい存在と見られなかった。
やはり汚い。落とし物確定だ。
手が触れた瞬間、彼女の「にへ」とした気の抜けた笑顔がやけに印象的だった。
「たいせつにしてくださいね!」
「そう……」
そんなことを言われても、先程捨てようと思っていたところだったのに。
「こんな汚いものを大切にしろだなんて、よく言えるね」

「きれいじゃないですか」

笑う彼女の声には皮肉もからかいもない。
純粋にそう思っているのだろう。僅かに傷の入った小さなビー玉と灰色に汚れた一枚の羽根を、綺麗だと。
「綺麗なの、これ」
「うん!」
凄く嬉しそうな笑顔。
(だったらわざわざ僕にくれなくてもいいのに)
そう言おうとして、やめた。
自惚れてしまう、と思った。
(捨てられなくなった……)
こんな些細なことで、こんな粗末なものを。
こんなにも、心が踊るなんて。
なんてお安いものだ。

(とりあえずこいつらの保管方法を考えなければ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

inserted by FC2 system